先日、NHKスペシャル(7/12)で、『腰痛治療革命』という特集がありました。
日本の国民病ともいえる「腰痛」、とりわけ3ヶ月以上痛みが続く慢性腰痛の痛みの謎が
解明されたという内容でした。
慢性腰痛は、その原因が特定しづらく、7割はストレスなどの精神的要素が原因だというのが
医学界の常識になりつつあります。
NHKスペシャルでは、海外の研究成果から、慢性腰痛の痛みの原因は腰ではなく「脳」に
あり、脳のリハビリで痛みが劇的に改善する可能性がある、と報告していました。
では、腰痛の原因が脳にあるとはどういうことなのか?
それは、前頭葉あたりにある『DLPCF』という領域が、慢性腰痛の人は健康な人に比べ、
体積が小さくなり活動も衰えているという現象に基づきます。
このDLPCFは、身体の痛みの回路に興奮を鎮める指令を出す働きをしている場所で、そこ
が衰えているため、腰痛への過度の恐怖が引き起こされていると考えられています。
痛みが続くと、この部分は疲弊を起こし、ダウンしてしまうようです。
実際には腰は痛んでいないのに、脳が勝手に幻の痛みを作り出しているわけです。
この現象を元の正常な状態に戻すリハビリをすれば、慢性腰痛の痛みは劇的に改善するのです。
そこで、”脳のリハビリ”=腰痛の恐怖克服法ですが、番組では3つの取り組み方を紹介し
ました。
●第一弾:腰痛に関する教育的な映像を見て正しい知識を身につけ、無用の恐怖心をなくす。
これは腰痛に関する5本の映像を10日間繰り返し見てもらい、正しい知識を得てもらう方法
です。腰痛に関する正しいメカニズムなど知れば、自分の状態を客観的に見られ安心感が高まり
ます。
この方法で、ある60代の男性は、痛みが怖くて自転車に乗れなかったのが、10日後には
乗れるようになっていました。
これだけで、番組調査では、サンプルの38%に改善が見られました(175人中68人が
改善)。
●第二段:1回3秒、ある姿勢をとる。
これは尻に両手を当てて前に押し出し、背中を反らす姿勢です。
腰痛の人は、背中を反らせる姿勢に痛みの恐怖を感じ、つい前かがみになり勝ちです。そこで
あえて怖い姿勢をとらせ、それでも痛みが出ないという自信を持たせるのが狙いです。
これを続け、介護施設で働くある50代男性は、2週間で慢性腰痛の痛みが改善しました。
この方法で、上のサンプルの残り62%のうち、32人が痛みが改善しました。
これら2つの「脳のリハビリ」で、半数以上の56%に改善効果が認められたので、これは
かなり効果のある慢性腰痛改善法といえます。
しかし、それでもダメな重症ともいえる4割の人は、どうするのか?
それについては、オーストラリアで行われている「認知行動療法」という方法を紹介して
いました。
毎日8時間、3週間にわたって行われる心理療法です。カウンセリングと運動を毎日交互に
おこなう方法です。
この方法では、10人中8,9人くらいの高い確率で、治療効果が上がっていたようでした。
日本では、福島県立病院の整形外科がこの「認知行動療法」を積極的に行っています。
ただ、保険適用でないので、実費負担になるでしょう。
今や、腰痛の本当の原因は脳にあるということがわかってきましたが、このメカニズムは
腰痛だけに留まらないでしょう。他の関節の痛みもそうだし、糖尿病や通風などの内臓的な
慢性疾患でもありうると私は思います。
やがては、治りづらい様々な病気で、脳との関連性が明らかになっていくに違いありません。